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正確な電車のダイヤのナゾを知って思うこと。 [ノンフィクション]

 日本の鉄道の正確さたるや、世界でも稀であるらしい。JR東日本の統計によると、一列車あたりの遅れは新幹線が平均0.3分、在来線が平均1.0分というすさまじさ。つまり、新幹線の95パーセントと、在来線の85パーセントは時刻表通りにきちんと発車していることになります。他国の数字でいいますと、イギリスもフランスもイタリアも、平均して90%程度の定時運転率はたしかに計上されている。しかし、日本の「遅れ」が1分以上遅れた列車はすべて「遅れ」としてカウントされているのに対して、外国のそれは10分以上、ひどい国になると15分以上の遅延しか「遅れ」とは見なされていないというのです。なんというお国柄の違いでしょう!! 途上国になりますと状況はもっとひどくて、もともと定刻発車なんてこと自体を乗客が期待していないことがほとんど(笑)。1時間遅れで電車がやってくればいいほうで、三時間、四時間待ちなんて状態が日常茶飯事だというのです。

 三戸祐子「定刻発車」(新潮文庫)を読むと、私たちが普段当たり前と考えている鉄道の正確さについて改めて考えさせられてしまいます。本書は、世界でも異常とされる超正確な電車の運行管理について、その歴史から具体的な手法、緊急時の運行回復システムに至るまで詳細に解説された鉄道ノンフィクションです。鉄道マニアならずとも、身近に利用している鉄道の裏側にはこんな仕組みが隠されていたのだという知識満載で、ちょっと得した気分になること間違いありません。

 たとえば、一日になんと217本の列車を発着させなければならない、東京駅の東北・上越新幹線ホームの話。これだけ過密スケジュールになると、盆・暮の混雑時には後続電車待ちの乗客をホームに収容することすらできません。そこで考えられたのが、電車毎に指定席・自由席の配列を変えることによって、ホームに並ぶ乗客の位置を分散させる手法だとか。乗降客の量、手荷物の数、そこから予測されるホーム上の占有スペース…。これらの数値が厳密にシュミレーションされることによって、アクロバット的な東京駅の発着数は実現できているらしい。

 あるいは、二分半の間隔で発着する朝のラッシュ時の山手線や中央線のダイヤ。混雑時の乗客の乗り降りには平均して二分半かかるというから、数秒でも発車が遅れると後続電車に大変な打撃をもたらしてしまう。そこで採られているシステムが、交互発車という考え方。発車できるホームを予備に作っておいて、そのホームで一台待機させることによって電車が断固状態になるのを避けるという余裕を持たせるのだそう。そういえば、新宿駅(特急ホームをラッシュ時のみ暫定的に使用)や池袋駅でこの交互発車をよく見かけます。

 さらには、ブレーキ扱いによって数分の遅れを少しづつ取り戻すという運転士の驚異の運転テクニック。「一つの駅のブレーキ扱いでだいたい五秒縮められる」ため、29駅ある山手線一周でおよそ30秒の回復になるとのこと。二週目でまたそれを繰り返せば、一分の遅れも一挙に取り戻してしまう……。

 しかしこうした記述になると、先日起きたJR西日本福知山線の脱線事故の原因そのものがこうした運転テクニックそのものにあることを現在の読者なら誰でもご存じであり、複雑な気分になるに違いありません。「日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか?」というのが本書の副題でありますが、いまやそんな技術礼賛の時代ではないのも確か。むしろ本書は、「どうして私たち日本人は、鉄道にここまでの厳密性を求めるのか」という新しいテーマに向かうきっかけを与えてくれる書として読まれるべきでしょう。電車が2〜3分遅れるだけですぐに怒り出してしまう日本人。安全に対するJRの責任感の欠如を責め立てるのもいいけれど、それを強いているのは実は私たちの「時間感覚」にあることを忘れてはならないのです。


定刻発車—日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか?


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コメント 2

urasimaru

山手線の運休があったので検索してトラックバックさせてもらいました。
この技術レベルが今後保たれうるか、多大な犠牲を払って保たれるべきか、疑問に思いますね。
by urasimaru (2005-11-07 22:50) 

Youkimu

http://www.japan-hotels.hippy.com/
by Youkimu (2006-01-13 01:58) 

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