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アートの世界は偽物だらけ [アート]

 またまた韓流ドラマの話で恐縮ですが、「天国への階段」で、テファお兄ちゃんが名作の贋作を書いて警察に捕まるシーンがありましたね。しかしソンジュが警察に手を回すと、あらら不思議、テファは簡単に釈放されてしまう。「そんな莫迦な…」って、思うかもしれませんが、実は贋作を描くこと自体はべつに法律に触れるわけではないのです。贋作を描き、それをあたかもホンモノのように見せかけて高額な金額で売買する行為が、著作権侵害と詐欺罪に当たるだけのこと。そしてさらに不思議なことには、贋作の売買が刑事事件になることもまた、世の中では珍しいらしいのですね。いったいどうして? なぜなら、美術コレクターや関係者にとって贋作をつかまされたということは自らの鑑識眼のなさを露呈することであり、それによって生じる不利益の方がよほど大きいからであるといいます。かくして、美術の世界では、今も昔も、世界中でさまざまな贋作事件がそこら中で頻発しているのです。

 日本でも、有名なところで日経新聞文化欄に掲載された「高麗青磁の復元記事」事件というのがありました。ニュースでも取り上げられて大騒ぎになったので、覚えている方も多いことでしょう。事件の顛末は、こうです。韓国で長年にわたって陶芸家たちが研究を続てきた「高麗青磁」の完全復元に、こともあろうに日本人の谷俊成という特殊工芸研究家が成功したと、日経新聞の文化欄で大きく取り上げられた。記事によると、それらの作品は海外での展覧会を経由して、ついに京都府立文化博物館で「高麗陶芸・パリ帰朝展--谷俊成の世界」が開催されるという。海外で大成功を納めたという歴史的な作品群の凱旋帰国に、美術関係者はこぞって注目し、再現された高麗青磁は一個300万円という破格値で次々取り引きされた……。

 しかし実は、この高麗青磁の完全復元という事実そのものがまったくのデタラメ。谷俊成なる人物は、韓国の安物の青磁を韓国の窯元から買い上げて自分の銘を入れさせていただけの典型的な詐欺男にすぎなかったのです。そんな詐欺男に、こともあろうか天下の日経新聞がだまされ、京都府立文化博物館での展覧会には外務省、京都府、京都市の後援までついていた。高麗青磁の復元に成功した国際貢献が評価されて、外務省から大臣表彰まで授与される。国際交流基金からは100万円の資金助成まで出されたというおまけつき。単なる一人のいかさま男に、こんなにも多くの人々や団体がだまされるという美術史上例のない珍事件であり、結果として犯人のPRに活用されてしまった日経新聞は完全に面目を失ったというお話しでありました。

 大宮友信「お騒がせ贋作事件簿」(草思社)には、そんなとんでもない詐欺事件がてんこ盛りにつづられていて、読んでいて人間のあまりの莫迦らしさに笑ってしまうという書物であります。世に言うお宝の四割は偽物だとか、千点近い贋作がある藤田嗣治とか、「江漢に江漢なし」と言われるほど偽物だらけという司馬江漢の話とか、美術に興味がないヒトでも、さすがに読んでいてあきれるばかり。だます画商に、だまされるコレクター。書画骨董の世界は、偽物だらけ。実は、何十億という公金をはたいて購入したという公立美術館・秘蔵の名作絵画にも、偽物が多く存在しているというのだから、開いた口がふさがらない。

 人間、欲に駆られて行動するとこういう目に遭うという実にユニークな事例集としてお読みいただきたい(笑)。大体ですね、アートなんてものは、いいものはいい。好きなものは好き。自分の趣味に合うものだけを飾っていれば、それでいいのです。どうしてその作品に経済的価値をつけようとするのかね? 要は自分が購入した美術品を、金銭の高さでしか評価できない自信のなさの現れなのではないでしょう。本書を読んだら、金持ちの知人のリビングに飾ってある高尚な名作を観るたびに、笑いが止まらなくなること請け合いですよ。


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